2010年11月9日火曜日

平城宮東院庭園の石菖





間があきましたが、前回にひき続き平城宮遷都1300年祭でのことです。平城宮の東院庭園が復元されて公開されていました。そのお庭の湧水源のあたりになんと石菖があるではないですか。石菖については以前も取り上げましたが、まさかこのお庭にあるとはびっくりです。復元にあたった奈良文化財研究所に問い合わせたところ、偶然に生えたのではなく、当時あったであろうということで植栽計画に入れたとのことでした。古代日本では「あやめぐさ」というと菖蒲のことでした。一方中国での「菖蒲」は日本での「石菖」のことらしく、「あやめぐさ」の場合も実際は石菖を指すことが多かったのではないでしょうか。特に湧水の近くなど水の綺麗なところには必ずといっていいほど石菖が群生しており、菖蒲を見かけることはほとんどありません。ところでこのお庭の近くには、光明皇后縁の法華寺があります。こちらのお寺には「浴室(からふろ)」といって、光明皇后が当時病気に苦しむ人のためにつくったとされる浴室の遺構があります。蒸し風呂(現代のサウナ)のようなもので、以前に私が入浴体験させていただいたことをリポートいたしました。この風呂では薬草を使っていたといわれております。しかしどのような薬草を使用していたのかは、解らないようです。ただヒントになる資料は存在します。「金光明最勝王経」というお経で、光明皇后が最も重要視していたお経です。光明というお名前もこのお経に由来しているとのこと。このお経の中で「大弁財天女品第十五の一」では、お釈迦様が弁財天にお風呂の入り方を教えているくだりが記されてあります。そこでは使用する薬草が32種揚げられているのですが、一番最初に「菖蒲」が出てくるのです。中国で「菖蒲」の表記が日本の石菖とすると、やはり当時石菖はお風呂に使用されていたと考えられます。その証拠といいますか、現在の法華寺の池にも石菖が存在しています。石菖のことをあまり注目する人もいないので、実際どうだったのかは解りません。私ひとりが感動しているのです。でもブログでは、石菖のことを折に触れて紹介したいと思います。どうか光明皇后様お導きください。合掌。
写真 上から 東院庭園全景 庭園の東北の湧水源近くの石菖 法華寺の石菖 法華寺の石菖の拡大

2010年10月27日水曜日

天平茶会






10月22日(金)
平城遷都1300年祭の平城宮跡の会場の東院庭園広場では「天平茶会」という催しが行われておりました。遣唐使によってお茶がもたらされた当時のお茶を復元するという試みとのこと。古代のお茶は「餅茶(へいちゃ)」と呼ばれ、小さな丸い煎餅のようなかたちであったといいます。まず、蒸した茶葉をすり潰し、餅のように五百円玉ほどに成形。それを日干しにして、固めて焙炉で1晩乾燥。お茶をいれる直前に再度焙って茶碾で挽いて、粉状になったら沸騰した湯に入れる。菓子には当時の高級菓子で、牛乳でつくられた「蘇」と干柿の中に柚子の果皮を芯として堅く巻き上げた「柿寿賀」というもの。当時あった素材だけでつくられています。「蘇」はキャラメル色で、口に入れると乳製品特有の濃い香りが広がります。干柿の方は干柿の甘さに柚子の風味がブレンドされて素朴ですが、品のある味わいが印象的でした。肝心のお茶は色からもほうじ茶に近いもので、香りも緑茶の雰囲気を残しながら焙った香ばしいところもあるというものでした。この茶会をプロデュースされた奈良煎茶道の「美風流」家元、中谷美風氏が解説してくださいましたが、「平城宮があったこの場所で、当時と同じお茶を飲むということにとても意義があると思います。」とおっしゃっていたのが印象的でした。
写真1当時の衣装を再現 2お茶と菓子 3焙る前の丸形にしたお茶 4お茶を入れる前に焙った状態 5それを粉状にしたところ

2010年10月8日金曜日

胸が痛むキンモクセイの香り


キンモクセイの香りが街角でも感じるようになりました。やっと秋らしくなってきたことを、キンモクセイの香りが教えてくれます。7日にお亡くなりなった大沢啓二氏は、キンモクセイの香りが漂うと毎年胸がチクチク痛んだのだそうです(サンスポの記事より)。戦力外の選手に通告をする時期で、「もうこなくていいよ」と言わなくてはいけない心中を、記者に吐露していたとのことでした。キンモクセイの甘い香りも人の経験によっては「痛い」香りにもなるのでしょうが、香りからそのような心情が湧いてくる「親分」はやさしい人だったと想います。大好きだったサンデーモーニングでの「喝!」「あっぱれ!」が聞かれないのがとても残念です。ご冥福をお祈り申し上げます。

2010年9月25日土曜日

ロハスな水車杉線香







9月23日秋分の日、茨城県石岡市小幡にある清明堂というお線香屋さんにうかがいました。こちらでは筑波山麓からの水を利用して杉の葉を水車で挽くという昔ながらの方法で線香をつくられています。杉線香の原料は杉の葉のみ、動力も水車といった100年変わらない製法を続けているのは、五代目の当主である駒村道廣さん。便利さを追求する生き方よりも、自然と溶け込んだ生活の延長として線香づくりの生業をなさっているように感じられました。うかがった日は大雨でしたが、水車は川の水量によって、水車に流れる水の量を調節しなければならないそうで、川から水車に水を引き込むところの水量の調節を気になさっていらっしゃいました。休日で製造作業はなくても、始終こうした自然環境の変化に対応されているのでしょう。ロハスな生き方といいますと、何かかっこいいイメージもありますが、そればかりではないことを駒村さんから教えていただきました。水車小屋には、「ゴトンゴトン」と一定のリズムを刻む水車の音と水の音、そこで挽かれる杉の葉の香りが漂っていました。私にとってそれは、杉樽のある酒蔵に似た雰囲気にも感じられました。自然の素材が時間をかけて醸し出すものはどこか共通するのかもしれません。駒村さんのつくる杉線香の香りは、沈香や白檀などを使った高級線香の香りではありませんが、素朴でいながら品のある香りがします。ちょっとたとえが変かもしれませんが、昔は拝殿などなく、磐座や樹木などをご神体として拝んだそうですが、こういう香りを通して、私たちは精霊や神仏との交流をも可能になるのではないかと想われました。水車小屋の水の流れるあたりには石菖が群生しており、また付近には果樹園が多く特に「福来みかん(柑子みかん)」という橘に近いみかんも栽培されておりました。私がライフワークとしている香りの植物たちが元気に育っておりました‼ 筑波山麓は、私にとってまさに楽園といえるところとなりました。写真上から 水車・駒村道廣さん・水車杉線香・杉の葉を粉に挽く・石菖・福来みかん(陳皮として七味の材料として使っている。)

2010年9月18日土曜日

香りのパワースポット



最近パワースポットという言葉をよく耳にします。神社やお寺、巨樹や霊水、磐座などの人気スポットが紹介されております。箱根湯本にある玉簾の滝(写真上)もとても気持ちのよいところです。夏など滝の付近は、まるで天然のエアコンのように涼しいのです。この滝は天成園という旅館(日帰りもあります。)の敷地にありますが、滝だけ見学することもできます。しかし天成園の温泉にゆっくり浸かって、滝を愛でるのがベストだと思います。その時滝壺の周辺の草に注目してみてください。写真(写真下)のように菖蒲の葉を細くしたものを見つけることができます。これは石菖といいます。別府温泉ではこれを蒸し湯に使っているのです。葉を揉んでみてください。とても良い香りがします。体にもよいですし、この石菖はこうした清らかな湧水地に群生する植物のようです。玉簾の滝の石菖のような「香りのパワースポット」をこれからもリサーチしていきたいと思っております。

2010年9月6日月曜日

フィトンチッドフォーラム2010

9月6日
フィトンチッド普及センター主催の第13回「フィトンチッドフォーラム2010」が東京大学弥生講堂で開催されました。今年はフィトンチッドの多様なはたらきを科学するということで、生物活性物質についてのこれまでの成果、スギ樹皮の生物活性、わさび成分の各種機能性など、なかなか興味深い内容でした。また会場となった弥生講堂が木をふんだんに使った建物で、中にに入ると森林浴のように木の香りに包まれてとても癒されました。

2010年8月9日月曜日

伊豆天城の黒文字の蒸留体験








8月3日4日と、伊豆の伊東市富戸の日吉家で、三代に渡って続けられている黒文字の蒸留体験をさせていたたきました。実際の蒸留を体験させていただくことと、伝統的な蒸留法を記録として残したかったからです。今度で2回目ですが、今回は真夏の時期、それも記録的に猛暑・激暑の中での蒸留体験でした。スギ・ヒノキの林の中に点在する黒文字の枝を集め、約200キロを釜に詰め込みます。作業としては、この詰め込み作業が最もしんどいものでした。黒文字の枝葉を踏みしめながら、詰めていきます。(踏圧)この作業がじつに2時間かかりました。
真夏の太陽が輝く、炎天下の作業で熱中症にならなかったのが不思議なくらいです。詰め込み作業が終了すると釜に蓋を被せて、いよいよ蒸留が開始されます。20分ほどしますと、水蒸気が溜まりだし、ほどなく上澄みに黒文字の精油も溜まりだしました。精油が誕生する瞬間は感動します。それまでの苦労もいっぺんに吹き飛んでしまいます。技術的には蒸気を漏らさないために粘土質の泥で隙間を埋めたり、独特の冷却装置を使用するなど、他の蒸留方法では見られないものがあります。この貴重な黒文字の蒸留方法が、黒文字の精油とともに継続されますことを祈ってやみません。
最後の写真は、蒸留後蒸された黒文字の上での全身蒸し湯体験をしているところです。
黒文字の蒸し湯という贅沢な体験です。とにかく気持ちがいいですよ。北海道の下川町のモミの精油を採っている人たちが、蒸留後のモミに顔を埋めて顔蒸しをしたり、足蒸しをしていましたが、黒文字も至福の香り体験といえます。
伊豆の温泉施設で、是非黒文字の蒸し湯を実現していただきたいものです。

2010年7月29日木曜日

嗅ぎたかったショクダイオオコンニャクの臭い

 小石川植物園HPより
小石川植物園のショクダイオオコンニャクが、話題になりました。その臭いは食べ物が腐ったような強烈な臭いを発するとのこと。開花の始まった7月23日に世紀の香りを嗅ごうと思って植物園に問い合わせたところ、あまりの来園者で入園を中止したとのことでした。「このブログでもその臭いがどんなものかを報告するつもりでしたのに、ああー残念。」友人によると普通のコンニャクの花も相当臭いといいます。そういえば最近五十肩の痛みに、コンニャクを茹でて熱くしたものをタオルにくるんで患部にあてると効くと母に教えられて、試したところ確かに改善されました。その時に「コンニャクは結構生臭いな」と思いましたので以外とコンニャクの臭いを強烈にしたものを連想すると近いのかもしれません。でもやっぱり実際にかぎたかったなあ。

2010年7月21日水曜日

京都の香り



7月17日は京都祇園祭の山鉾巡行の日です。梅雨明けの真夏のかんかん照りのなか、熱中症一歩手前になるほど、この日の京都は猛暑でした。あまりの熱さ・暑さに水分補給が頻繁でしたが、巡行見物の途中に平野屋さんというお豆腐屋さんの前を通りました。お店の人が1リットルほどのポリの容器に豆乳を入れてどこかへ届けるところのようでした。それを見た友人が、「豆乳分けてもらえませんか。」とお願いしますと、「何か入れる容器は持ってきているなら分けますよ。」とお店の人。ちょうど私たちは、その前の喫茶店で京都限定の保冷用のボトルを買っていたので、それに豆乳を入れてもらいました。豆乳に鼻を近づけると大豆の香りがぷーんとしてきます。平野屋さんは、京都でも一流の旅館「俵屋」さんなどにお豆腐を納めている老舗とのことです。そんな老舗の豆乳を1杯70円でいただけるなんて恐縮してしまいます。豆乳の香りには、届けに行くところを嫌な顔もせずに、振る舞ってくださったお店の方の思いやりが込められているように感じられました。これが今年の祇園祭の香りの思い出です。

2010年7月7日水曜日

石菖の蒸留




7月5日蒸留装置を製作している有限会社東京製作所にうかがいました。蒸留装置の購入のためでしたが、何か採りたいものがあったらデモ器で実験しますとのことで、石菖を持っていきました。水を2ℓ入れ、その上に石菖の葉と根を刻んで1.5㎏入れて蒸留開始。20分後に水蒸気が出始め、それから約20分で蒸留水が200㏄ほど溜まりました。精油も2〜3㏄ぐらいは採ることができました。実験でも精油が採れるのはうれしいものです。

2010年7月2日金曜日

秋田スギの精油





6月29日
世界自然遺産である、白神山系に抱かれた能代で、秋田スギの精油の製造が実用化に向けて準備されています。
この日も蒸留装置の試運転ということで、取材を兼ねて見学させていただきました。原料のスギの葉は、スギ林の間伐材を細かく砕いたものを使用しています。装置は200キロほど入る四角い釜が2基で、この日は1基の釜で約800㏄の精油が採油されました。スギの葉はお寿司やさんの寿司ネタのケースに敷かれてあるように、防腐効果があるといいます。トリートメントの香料として、またはお部屋の空気の浄化など空間の演出にも幅広く使われると考えられます。白神山系というパワースポットのエネルギーを、香りで感じることができました。

2010年6月19日土曜日

法華寺の浴室体験



6月13日、念願でした奈良の法華寺の浴室(からぶろ)の体験をさせていただきました。
このお風呂は光明皇后が「千人施浴発願」によって建てられたものとされ、我が国の社会福祉の原点というべき建物とされています。説話によると皇后が千人の垢を流すという誓願をされ、千人目の爛れた病人の膿を吸うとその人は忽ち仏様になったといいます。
窯で湯を沸かし、その蒸気を簀の子を敷いた下から出す仕組みになっていて、古代サウナ風呂といったとろです。畳一畳程の個室が二つあります。温度は70度ぐらいのでしょうか。数分でじわっと汗が滴り落ちてきます。ヒノキの香りがしました。蒸気の通路にヒノキの材を置いているとのこと。光明皇后の時代はなんらかの薬草を使っていたのでしょう。
簀の子に直に蒸気があたると熱いのでそこに敷くから「風呂敷」、中ではおった着物が「浴衣」だといいますが、こうした実体験をしますとなるほどまんざらではないような気がしてきます。
現在年に1回だけこうした施浴体験日を設けているとのことでした。ただし誰でも入れるのではありませんから、ご興味のある方はお寺の方にお問い合わせください。

2010年6月17日木曜日

沈香の花


京都にある某薬用植物園で沈香の花が咲いていました。
沈香の木を日本で見るのも珍しいですが、花を見ることができて幸運でした。
ただ残念ながら花自体には香りがありませんでした。
貴重な沈香の花、とくとご覧あれ。

2010年6月3日木曜日

五月待つ花橘の香り




5月25日、京都の白峰神社拝殿の前の橘の木に花が咲いておりました。
昨日の雨の後だからでしょうか、ミツバチやアオスジアゲハが橘の花に集まっておりました。橘の花の香りはネロリに近いのですが、それよりライトな感じというか、楚々とした雰囲気です。また近くには「含笑花」と呼ばれている花も咲いていました。こちらは何とバナナそっくりの香りがするのです。花の香りは本当に不思議です。後で調べてみましたところ、トウオガタマ(モクレン科 オガタマノキ属)学名:Michelia fuscata Blumeとありました。

2010年5月19日水曜日

一年越しのホウの花




あれは1年前、コニカミノルタ満天の支配人河野氏より電話がありました。「今ホウの花の香りを嗅いでるんですよ。あまりにもすばらしい香りで思わず電話しちやいました。」香りに感動して電話してくるなんて私の経験でもはじめてのことでした。星がご専門のはずなのになんというお人なんだろうとその時は思いました。で、昨日1年越しの河野氏が感激した新宿御苑のホウの木に、河野氏とともに対面することが叶いました。新宿御苑自体はじめての入園でした。大名屋敷跡に、明治政府が西洋の樹木を街路樹に取り入れるために育てたところだとのこと。苑の木は圧倒的な大木が多く存在感があります。ホウの木もりっぱでした。花の時期としても理想的だったようで、たくさんの花が開花していました。さて肝心の香りですが、さすが河野氏が絶賛するだけのものがありました。ガーデニアのような雰囲気の中にバナナのトップノートなどのフルーティな芳醇さとグリーン感が絶妙なバランスで保たれているのです。河野氏曰く、「花が香水のように香りの成分をブレンドしている。」自然の香りなのに、単純ではなくさまざまな成分が複合して醸し出している香りに感じられました。55歳になって私がはじめて嗅いだホウの香りからは、自然界の妙を教えられました。

バラ三昧


5月15日、神代植物公園春のバラフェスタのイベント 香りのモーニングツアーにオブザーバーとして参加いたしました。主催サイドの知人長野久絵さんから相談があり、講師として蓬田勝之氏を私がご推薦させていただいた経緯がありました。蓬田氏は元資生堂の調香師でいらっしゃり、バラの香りについてはこの人の右にでる人はいないという方です。写真はバラの香りの嗅ぎ方を教えているところです。この日は好天に恵まれ最もきれいな朝の瑞々しいバラの香りを堪能することができました。一概にバラの香りといっても本当にさまざまな香りがあるものです。バラの香りを嗅いでいますと戦いなど起きないのではないかと想われます。バラ爆弾を開発して、戦地に落としてみたらどうだろうなどと想ってしまいました。

2010年5月15日土曜日



森林の市
5月7日8日は、日比谷公園で「森林の市が開催されました。
両日ともお天気に恵まれ多くの方が様々な森の香りにふれることが
できたことでしょう。
このイベントでの私のお気に入りは、なんといっても鉋屑風呂です。
ヒノキ・コウヤマキ・スギなどの鉋屑が木枠のプールに入っており、
自由にその中に入って、香りを浴びることができるのです。
特にコウヤマキの香りがすばらしいのです。
木の風呂桶としてはコウヤマキが最高だといわれます。
京都の最高級の旅館である俵屋さんのお風呂もコウヤマキです。
その他黒文字の木の鉛筆や笛づくりも楽しい体験です。
木を削ったりすると香りがしてきて、何ともいえない気分(木分)ですね。
ニンベンに木で「休」という字ですが、やはり人は木とともに居てやすらぎを
えるのだなあとしみじみと想うことができました。

2010年5月10日月曜日

御柱祭の香り



5月3日4日と、信州・諏訪大社の御柱祭を観にまいりました。このお祭りは、長さ約17メートル、直径1メートル、重さ約10トンのモミの大木を山から切り出して、人力のみで各神社まで曳いて、社殿の四隅に建てるというものです。私が観ましたのは、上社の里曳きでした。前日までに社殿の四隅まで柱を曵いて、翌日建ち上げるという祭りのクライマックスでした。
伝統的な祭りであり、地元の人々がそれこそ神様に対して命がけで執り行うという、どこか背筋がぴんとするものを感じさせるお祭りでもあります。このようなお祭りこそが、日本の本当のお祭りなんだなあとしみじみと感じられます。
たくさんの人が柱を曵くのですが、写真のように地面には擦れた木の跡が残ります。そしてあたりにはモミの木の香りが充満しています。

榊葉の 香をかぐわしみ 尋(と)めくれば 八十氏(やそうじ)人ぞ まとゐせりける
榊の葉の香りがよいので、その場所を求めて尋ねくると、多くの人たちが楽しそうに寄り集まっていることだ。

こんな神楽歌を思い起こします。

こうしたところにも日本の香りの文化が息づいています。